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【INTERVIEW】茨城県笠間市:北野 高史氏
 ~逆参勤交代で学んだこと。 それは、「関わりの構造化」と「雑談の中に気づきあり」

2021.11.09

地域を支えるキーパーソンに、逆参勤交代から広がるつながりを語っていただく「INTERVIEW」。 今回は、茨城県笠間市での逆参勤交代実施にあたり事務を担当した北野 高史氏(笠間市 市長公室 参事兼政策推進監)にお話を伺いました。

フィールドワーク時にガイドをする北野氏


江戸時代中期から続く伝統的工芸品「笠間焼」、茨城のグランドキャニオンの異名を持つ「石切山脈」、日本一の栽培面積を誇る「笠間の栗」など、豊かな自然と文化、観光資源をあわせ持つ茨城県笠間市。東京から電車で約1時間というアクセスの良さを活かして、まちの魅力を関係人口、定住人口の増加につなげていきたい———その想いを実現するべく、笠間市は、いち早く逆参勤交代に参画し、丸の内プラチナ大学と手を携えながら活動を続けてきました。

2017年9月、地方と都市をつなぎ、東京の人的リソースを地方へ還元するための学びを行う「ヨソモノ街おこしコース」を皮切りに、同年11月には、笠間市の魅力を満喫できる日帰りの現地視察ツアーを実施。そして2018年8月、満を持して「逆参勤交代コース」による3泊4日のフィールドワークが開催されました。受講生たちは笠間市の「今」に触れる中、“よそ者”ならではの視点で課題を見出し、最終日の市長プレゼンでは、笠間市を盛り上げるためのビジネスプランを提案しました。

これらの取り組みが実現した背景には、笠間市 市長公室 政策推進監を務める北野高史氏の存在がありました。逆参勤交代を通じて得られた気づきや変化、今後の展望に至るまでについて、松田智生(丸の内プラチナ大学副学長・逆参勤交代コース講師/三菱総合研究所主席研究員)と田口真司(丸の内プラチナ大学副学長/エコッツェリア協会プロデューサー)が北野氏にインタビューしました。

田口 早速ですが、逆参勤交代コースを実施されてみて、どのような変化がありましたか?

北野 実施する以前の移住関連施策の検討では、観光や陶芸など、笠間市の資源をひとつのきっかけとして来訪された方がリピーターになり、短期滞在を経て、移住につながっていくというような流れを想定していたのですが、そのような決まりきったプロセスは存在しないことに気づかされました。それと同時に、来訪してくださった方たちに対して、「笠間市というフィールドを暮らしの一部として加えていただくためにはどうすればいいのか?」という本質的な課題に向き合い、再考する機会をいただきました。その中で、リピーター、短期滞在、移住などそれぞれの関わりを構造化させ、対策を講じることが必要だという気づきを得ることができました。また、働き方改革と地方創生を体系化した制度としても、たいへん参考にさせていただいております。

松田 今、北野さんがおっしゃった構造化というキーワードが印象的でした。観光なのか、サテライトオフィスなのか、移住なのかという、「関わりの構造化」が大事だということですね。

田口 逆参勤交代コースには、我々が日頃活動する大丸有(大手町・丸の内・有楽町)をはじめとした首都圏の就業者の方たちが多く参加されました。よそ者の視点からの意見や提案についてのご感想をお聞かせください。

北野 受講生の方からは、雑談の中で多くの気づきをいただきました。例えば、稲田石の産地である石切山脈にお連れした際、建築に従事されている受講生の方が、「小田原にある江之浦測候所の石の見せ方は抜群に素晴らしい。参考になるんじゃないか」と教えてくださり、時を置かずに現地へ見学に行きました。こうした情報提供のほかにも、笠間市の資源を見て「こんなことができるのでは?」というさまざまな提案を多くいただき、大変ありがたかったです。

松田 異質な人材がやって来ると、新しい発想が出てくるということですよね。

北野 おっしゃる通りです。そうしたアイデアを事業として展開できれば理想的なのですが、行政として実際に落とし込んでいくとなると、やはり難しい側面もあります。そのような中、民間による事業として石切山脈で砕石、石材加工等を行っている『株式会社 想石』は、新たな取組みとして採掘現場を専用ガイドと車でめぐる「プレミアムツアー」や石切山脈を眺めながら栗スイーツを味わえるカフェ「U-A Cafeモンブラン」の営業をスタートさせました。「笠間独自の魅力を見せる」ことを意識した取り組みという意味では、逆参勤交代を含めて、多くの方の来訪や声が刺激やきっかけとなっているのかもしれないと個人的には思っています。

日本最古の菊の祭典とされる「笠間の菊まつり」の様子

田口
 逆参勤交代2日目に訪れた磯蔵酒造の五代目蔵主・磯貴太さんのお話が印象的でした。 グローバル化が進むにつれて、より多くの商品を生産し、多くの人に届けるべきだという風潮があります。もちろん、そうした商品を作ることも大事ですが、何よりも地域に愛される酒蔵を目指し、地域に根ざしたものづくりを懸命に守ろうとされている磯さんの姿にいたく感動しました。

松田 磯蔵酒造も連携して展開されている「酒米田んぼのオーナー制度」も素晴らしいですね。一口10,000円でオーナーになると、オーナー自身が育てたお米で作るオリジナル純米酒が6本届きます。私もこの制度に参加し、人生初の田植えを経験させていただきました。逆参勤交代コースでは、常日頃から「続けること、深めること、広めること」の大切さをお伝えしていますが、その地域と関わる次のアクションにつながっていくという意味でも、リアルな体験に優るものはないと改めて実感しました。ちなみに、今年は、笠間市のふるさと納税に参加し、返礼品として笠間栗や干し芋をいただきました。

北野 笠間市の逆参勤交代では、地酒をはじめ、農業や食、文化などの分野で、地域に根ざした活動に懸命に取り組んでいる人たちをキーパーソンとしてご紹介させていただきました。外から来てくださった方に自分たちの取り組みを見てもらい、「美味しいですね」「素敵ですね」と言っていただけることは、それだけで一つの力になると思います。

松田 逆参勤交代のように新しいコトを取り入れようとした時、当然、反対意見もあったのではないかと想像します。北野さんご自身の中には、「これはやってみるべき」というような強い想いがあったのでしょうか?

北野 東京は、笠間市から電車で約1時間と比較的近い距離にありますし、地元の人たちは、総じて、東京を強く意識する傾向にあります。ビジネスの商圏として関わりを持つ事業者もいる一方、東京や近隣の他県に移り住む人が多いのも事実です。「このままいくと、笠間市がなくなってしまうかもしれない」という危機感と現状を打破するために様々なことに挑戦するという市長の方針があった中で、「都市と地方がうまく関わっていくために、何をすれば互いにとって良いことなのか?」ということは、継続的な市の課題となっていました。

当初は移住に意識が向きがちでしたが、人々の暮らし方が変化していく中、移住だけではなく、新しい人の流れや関わりを作ることが必要ではないかと思いはじめていました。そんな折、松田さんからお声がけをいただきました。笠間市のような小さな自治体に興味を持ってくださることが、まず、本当にありがたかったですが、ひとつの制度として逆参勤交代を取り入れることによって、良い変化が期待できるのではないかと思い、実施させていただくに至りました。

松田 笠間市に関わるきっかけは、北野さんの存在でした。2015年のCCRCの講演を通じて出会い、その後笠間市に伺い、市長にもお目にかからせていただきました。 これは地方の自治体に限ったことではなく、都市も含めて言えることだと思いますが、時代の流れと共に2年も経てば状況は大きく変わってしまいます。そのような中、笠間市では、途切れることなく活動をご一緒できてありがたい限りです。

上段左・田口(エコッツェリア協会)/上段右・松田(三菱総合研究所)/下段・北野氏

田口
 今後も、関係人口の増加を図るべく、笠間市との親交を深めていきたいと思うのですが、北野さんの思う今後の連携についてお聞かせください。

北野 逆参勤交代は、間違いなく地方にとって必要な制度だと思います。自治体それぞれに考え方があるとは思いますが、体系化されているので地方としては取り入れやすい仕組みですし、関係人口の文脈で言えば、笠間市にとっては不可欠な制度です。もっと広がっていくべき取り組みですし、願わくは、この活動がもっと当たり前の状態にしたいと思います。この当たり前を、偶然に生まれたものではなく、必然的に生まれるものに仕組化できるのではないかと個人的には期待しております。

それを実現するために、私たち自治体は何をすべきなのか。これについては、今後も松田さんや田口さんと議論しながら考察を深めていきたいと思いますが、逆参勤交代は、東京にとっても、実は求められている制度ではないかと思います。今、コロナ禍で移住の流れが、神奈川県、千葉県、埼玉県などに広がっていると聞きますが、もう少し先のエリアまで伸ばすためにも、逆参勤交代は、東京、地方の双方にとって必要であり、かつ有効的な手段であると強く感じており、実証できると思っています。

田口 素晴らしい問いかけであり、重要な課題をいただいたと思うのですが、松田さんいかがでしょうか?

松田 まさに、地方創生と働き方改革は表裏一体であるということですね。

田口 今年、プラチナ大学も7年目を迎えました。年を追うごとに、逆参勤交代でご一緒する地域が増えている中、一度正式なプログラムでお伺いした地域に対して、分校という形で再訪させていただきたいと考えているところです。

北野 嬉しいご提案をありがとうございます。ぜひご一緒させていただきたいと思います。

松田 笠間焼や美術館など、アートフルな笠間を楽しむ分校があっても良いかもしれませんね。北野さんの素晴らしいところは、粘り強くやり続ける姿勢を保ち続けていらっしゃることだと私は思います。関係人口を創出し、ひいては、地方創生を実現していくためにも非常に大切なことだと思います。これからも協力し合いながら、笠間市をもっともっと盛り上げていきたいですね。

PROFILE
北野 高史(きたの たけし)
笠間市 市長公室 参事兼政策推進監
1971年生まれ。1996年に笠間市役所(旧友部町役場)に入庁。法制、選挙、行政区、合併、企画等の担当を経て現職。
2011年 プラチナ構想スクール(1期生)で「課題解決による新たな需要・経済の創造」という教えと、小宮山先生(丸の内プラチナ大学学長)イズムに触れ、2013年の松田主席研究員の指導を経て、課題解決は「公民連携での挑戦が不可欠」をモットーに各分野で試行錯誤を実施。
笠間で暮らす、笠間に関わる「笠間人(個性的で自分勝手だけど魅力的な人たち)」を、もっと知ってもらい、世界中から新たな「笠間人」が集まり、まちにあふれかえることを目指しながら、自身のセカンド笠間人ライフも思案中。

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